はじめに
株をはじめる前に良い会社を見分ける方法として決算書の見方を簡単に紹介します。
会社について
会社の目的は取引を通じてお金儲けをすることです。
会社は活動し続け、利益を上げ続けることが会社の宿命です。そして、存続させるだけではなく、同時に拡大させ続ける必要があります。
会社が利益を上げることで株価が上がり、配当金が上がり、株の価値が上がっていきます。
基本的に会社は成長していくので株価も上がっていくということになります。
決算書について
会社の業績を知るために、決算書を見てみましょう。
決算書は、モノを金額に置き換えて表示されている会社の成績表のようなものです。
決算書は過去と比べたり、同業他社と比べることで変化や違いを見つけて将来を類推していきます。
決算書作成のために取引を記録しておくことを簿記といいます。
簿記について
簿記は左右に分けて取引を記録していきます。1つの取引を左右に分けて書くので、金額は左右同じになります。
この作業を「仕訳」といい、左側を「借方」、右側を「貸方」といいますが、名前自体にはあまり大きな意味はありませんので、借方の「り」が左を向いているので左側、貸方の「し」が右側を向いているので右側と覚えておくようにします。
そして、仕訳などの記録をまとめたものを「残高試算表」といいます。
残高試算表が完成したら、資産・負債・純資産・費用・収益に分けます。
資産・負債・純資産をまとめたものを「貸借対照表」、費用・収益をまとめたものを「損益計算書」といいます。
簡単に言うと
「貸借対照表」は、今いくら手元に残っているのか?
「損益計算書」は、今年いくら、もうかったのか?
といった感じです。
貸借対照表(B/S)について
貸借対照表の左側
貸借対照表の左側は、「会社の財産を表す金額(資産)」を示しています。資産は大きく2つに分けることができます。
「流動資産」と「固定資産」です。
「流動資産」は、1年以内に現金化できるもの、「固定資産」は、1年を超えて所有しですぐに現金化できないものです。
流動資産が多いほど、借金などの支払い能力に優れています。
「流動資産」の主なものとして現金及び預金、受取手形、売掛金、有価証券、棚卸資産などがあげられます。
「固定資産」の主なものとして建物、土地、工場、設備、特許権、商標権などがあげられます。
固定資産は、賃貸料を稼ぐための建物や土地、製品を作るための設備など、利益を生み出す元になる重要な役割を果たしています。
貸借対照表の右側
貸借対照表の右側は、「どうやってお金を用意したか」を示しており、「借りた金額(負債)」と「借りずに用意した金額(純資産)」を示しています。
同じ資産でも、純資産の多い会社が良い会社と言えるでしょう。
負債は「流動負債」と「固定負債」に分かれます。
「流動負債」は、1年以内に返さなくてはならない金額、「固定負債」は、1年を超えて返していく金額です。
「流動負債」の主なものとして支払手形、買掛金(ツケ)、短期借入金などがあげられます。
「固定負債」の主なものとして長期借入金、社債などがあげられます。
負債は必ずしもダメなものではありません。負債によって得たお金でその負債を返済して利益を生み出せるかが問題です。
「資産」の主なものとして資本金、資本余剰金、利益余剰金などがあげられます。
資本金は株式会社であれば株主が出資してくれた金額になります。
貸借対照表のポイント
①自己資本比率:総資本(流動資産+固定資産)の中で総資産(資産)が占める割合
自己資本比率(%)=純資産÷総資本×100
総資本は持っているお金の総額で純資産は返す必要のないお金です。会社がいかに借金に頼っていないか知ることができます。
一般的には30%以上必要と言われています。
②流動比率:流動資産と流動負債の割合
流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100
流動資産を上回る流動負債を持っていると、その負債を返済していくのが厳しくなります。つまり、借金をどの程度の余裕を持って払えるかがわかります。
130〜150%ぐらいが標準値と言われています。
③固定比率:純資産に対する固定資産の割合
固定比率(%)=固定資産÷純資産×100、もしくは
固定長期適合率(%)=固定資産÷(総資本+固定負債)×100
純資産は返す必要のない資産に対する固定資産の割合を見ることで、固定資産を無理なく利益が上がるように購入しているかがわかります。
100%以下が理想と言われています。
損益計算書(P/L)について
損益計算書とは、「費用」と「収益」を細かく一覧にすることで会社がどうやって儲けたのかを明らかにするものです。
「収益」は大きく「売上高」「営業外収益」「特別利益」の3つに分かれます。
「費用」は「売上原価」「販売費および一般管理費」「営業外費用」「特別損失」「法人税、住民税および事業税」の5つに分かれます。
利益の5つ
①売上総利益(粗利益):売上高ー売上原価
②営業利益:売上高ー売上原価ー販売費および一般管理費
③経常利益:売上高+営業外収益ー売上原価ー販売費および一般管理費ー営業外費用
④税引前当期純利益:売上高+営業外収益+特別利益ー売上原価ー販売費および一般管理費ー営業外費用ー特別損失
⑤税引後当期純利益:売上高+営業外収益+特別利益ー売上原価ー販売費および一般管理費ー営業外費用ー特別損失ー法人税、住民税及び事業税
用語の補足
販売費:本業である商品を販売するために営業に使った費用で、営業マンの人件費や宣伝広告費などです。
一般管理費:本業を行うために欠かせない費用で、オフィスの家賃や経理担当者の人件費などです。
営業外収益:本業の営業活動とは関係のない活動から生じる収益で、定期預金の受取利息や株式の配当金などです。
営業外費用:営業外収益の反対で、借入金の支払利息などです。
特別利益:土地や建物を売って得た利益などです。
特別損失:自然災害による損失や役員の退職金などです。
損益計算書のポイント
①売上高伸び率:売上高が前年度からどの程度変化したか
売上高伸び率(%)=(今年度売上高ー前年度売上高)÷前年度売上高×100
②営業利益伸び率:営業利益が前年度からどの程度変化したか
営業利益伸び率(%)=(今年度営業利益ー前年度営業利益)÷前年度営業利益×100
伸び率を見ることで会社が成長しているかチェックできます。
キャッシュフロー(CF)計算書について
第3の決算書と呼ばれるキャッシュフロー計算書は損益計算書と似ていますが、利益はウソをつくため、現金の増減とその理由を知ることが大切です。そのためキャッシュフロー計算書があります。
例えば、利益が出ているのに手元に現金がないため支払いができず倒産してしまうことがあります。いわゆる黒字倒産になります。
利益と現金は必ずしも一致しないため、損益計算書で利益の増減を見て、キャッシュフロー計算書で現金の増減を見ます。
大まかには3つのキャッシュフローである「営業キャッシュフロー」プラス、「投資キャッシュフロー」マイナス、「財務キャッシュフロー」マイナスのほうが経営的に安定した会社ということができます。
キャッシュフロー計算書のポイント
キャッシュフローを過去と比較して会社の状況を把握しましょう。
タイプ名 | 営業CF | 投資CF | 財務CF | ポイント |
優等生タイプ | + | ー | ー | 8:1:1なら超優等生 |
頑張り屋タイプ | + | ー | + | 将来に向けた設備投資が活発 過剰な投資なら注意 |
出直しタイプ | + | + | ー | 経営悪化➡固定資産売却により現金調達➡借金返済 リストラなどうまく行かず倒産の可能性も |
瀬戸際タイプ | ー | ー | + | 本業がうまくいっていない 借入金で設備投資➡借金でもがいている状態 投資CFもプラスなら、より危険 |
会社を知るための指標を見てきました。次は株を売買するときの判断材料とする指標を見ていきましょう。
株の指標について
①EPS:1株あたり当期純利益
EPSは大きい方が良いので、B社がお得です。
A社 | B社 | |
株価 | 100円 | 100円 |
当期純利益 | 200万円 | 100万円 |
発行株式数 | 10万株 | 1万株 |
EPS (1株あたり当期純利益) =当期純利益÷発行株式数 | 200万÷10万 =20 | 100万÷1万 =100 |
②PER:株価収益率で1株あたり当期純利益の何倍で株が売買されているか。
PERは低いほうが良いので、B社がお得です。
A社 | B社 | |
株価 | 100円 | 100円 |
当期純利益 | 200万円 | 100万円 |
発行株式数 | 10万株 | 1万株 |
EPS (1株あたり当期純利益) | 200万÷10万 =20円 | 100万÷1万 =100円 |
PER =株価÷EPS | 100円÷20円 =5倍 | 100円÷100円 =1倍 |
③PBR:株価純資産倍率で1株あたり純資産の何倍で株が売買されているか。
値が大きいほど割高で小さいほど割安なので、B社がお得です。
A社 | B社 | |
株価 | 100円 | 100円 |
純資産 | 200万円 | 100万円 |
発行株式数 | 10万株 | 1万株 |
BPS (1株あたり純資産) | 200万÷10万 =20円 | 100万÷1万 =100円 |
PBR =株価÷BPS | 100円÷20円 =5倍 | 100円÷100円 =1倍 |
最後に
何も知らない人のためにやさしく決算書の見方を紹介しました。
株をはじめる前に良い会社を見分ける指標として参考にしていただければと思います。
これが全てではありませんので、これをキッカケに色々な見分け方を学んでいきましょう。